初めての発表会で足の指にひびが入っていた|あの激痛の正体を一週間後のレントゲンで知った日のこと

発表会・体験談

この記事はこんな方に向けて書いています

「バレエで足が痛いけど、これって我慢していいの?」 「発表会が近いのに、受診すべきか迷っている」 「トウシューズを履いていたら足の指に激痛が走った」

——そんな悩みを抱えている方に、ぜひ読んでほしい記事です。

私はかつて、発表会の本番でひびが入ったままの足で踊り続けていました。そしてそれを知ったのは、舞台が終わってから一週間後のことでした。あのときもっと早く動いていれば、と今でも思います。同じ経験をする人を一人でも減らしたくて、この記事を書いています。

はじめに

前回の記事では、発表会のレッスン中にロキソニンも効かない激痛と戦い続けた話をお伝えしました。そしてその激痛は、発表会の本番当日にピークを迎えました。舞台に立ち、踊り切り、幕が下りた。それから一週間後、何気なく立ち寄った整形外科で撮ったレントゲンが、あの激痛の正体を明らかにしました。「ここ、線が入っているでしょ。これ、ひびの後ですよ」その言葉を聞いたとき、ほっとしたのか、驚いたのか、自分でもよくわからない気持ちになりました。あの痛みには、ちゃんと理由があった。気のせいでも、弱さでもなかった。骨にひびが入っていたのだから、痛くて当然だったのです。

本番当日、痛みはピークに達していた

発表会の本番当日の朝は、不思議なほど痛みがありませんでした。

「今日は大丈夫かもしれない」と思いながら、テーピングを丁寧に巻いて会場へ向かいました。ウォームアップも問題なくこなせて、「発表会当日ってこういうものなのかな」と少し拍子抜けするくらいでした。幕が上がる前の舞台袖。緊張はあっても、足の痛みはまだありませんでした。その日の演目は「ジゼル」第2幕のコールドバレエでした。第2幕は、ジゼルが精霊ウィリとなって踊る幻想的な場面です。コールドバレエとは、複数のダンサーが群舞として踊る場面のこと。主役を引き立てながら、全員の動きをぴったりと揃える。目立たず、でも乱れず、息を合わせてチームとして踊るのがコールドの醍醐味です。一人が乱れると、全体のバランスが崩れる。だからこそ、「自分だけが痛い」という事情は、舞台の上では関係ありませんでした。実は、出番と出番の間の休憩中に、こっそりトウシューズを脱いでいました。発表会のレッスン中は長時間トウシューズを履き続けていたため、足への不安があったのです。舞台袖の隅で静かにシューズを外して、足を解放しました。でも、次の出番が近づいてきました。再びトウシューズを履かなければならない。履き直したそのとき、足の中で何かが引っかかったような、妙な違和感がありました。「あれ?」と思う間もなく、鋭い感覚が走った。今思えば、あの瞬間にひびが入ったのだと思います。一度脱いで解放された足に、再びシューズを押し込んで体重を乗せた。そのときの衝撃が、骨に決定的なダメージを与えてしまったのではないか。確かめる方法はありませんが、振り返るたびにそう思います。そして幕が上がりました。踊り始めると、足の指がジンジンしはじめました。

それでも舞台に立った

幕が上がった瞬間、夢中で踊り始めました。舞台の上に出た途端、痛みより大きな何かが体を満たしました。照明の眩しさ。音楽の広がり。客席から伝わってくる静かな熱気。そして隣に並ぶ仲間たちの気配。「踊らなければ」ではなく、「踊りたい」という気持ちが体を動かしていました。ジゼルの音楽に乗って、足を動かす。腕を開く。視線を揃える。夢中で踊っていました。足が痛いことを、そのときはほとんど意識していませんでした。体が音楽を覚えていて、意識しなくても動いていた。レッスンを積み重ねてきた時間が、あの瞬間に体の中から溢れてくるような感覚でした。

「ああ、これが舞台というものか」

初めての発表会で、初めて感じた感覚でした。あの瞬間のために、痛みをこらえてレッスンを続けてきたのかもしれない。そう思えるほど、舞台の上の時間は特別でした。幕が下りたとき、現実が戻ってきました。舞台袖に入る瞬間、足に体重が乗った。その瞬間の痛みは、涙が出そうなほどでした。舞台の上では感じなかった痛みが、幕が下りた途端に一気に押し寄せてきたのです。アドレナリンが切れたのかもしれません。我慢していた痛みが、全部まとめて返ってきたような感覚でした。舞台袖で、そっと足を床から浮かせました。仲間たちと「お疲れ様」と言い合いながら、内心は足の痛みでいっぱいでした。

コールドバレエという経験が教えてくれたこと

足が痛くても踊り続けた理由の一つに、仲間への責任感がありました。コールドバレエは、腕の高さ、足の向き、顔の角度——全員が鏡のように揃って初めて美しく見える。一人が欠けることで、チームのバランスが崩れる。「私がいなければ成り立たない場所がある」という感覚が、痛みを超えさせてくれた部分もあったのです。リハーサルを重ねるたびに、少しずつ全体が一つになっていく感覚は、バレエならではの特別な喜びでした。それはバレエが「個人の芸術」であると同時に「チームの芸術」でもあることを、体で実感した瞬間でした。発表会当日の舞台袖では、たくさんの感情が混ざり合っていました。緊張、興奮、不安、そして仲間との連帯感。足は痛くても、あの空気の中にいられることが、40代になって初めてバレエを始めた私にとって、どれほど特別なことか。「始めてよかった」と、心の底から思えた瞬間でした。

発表会が終わっても、足の痛みは引かなかった

発表会が終わっても、足の痛みは引きませんでした。その日の帰り道、友人と食事をすることになりました。レストランでテーブルを挟んで向かい合って座ったとき、私はそっと友人に言いました。「ごめんね、足がどうしても痛くて。向かいの椅子に足を上げさせてもらってもいいかな」少しお行儀が悪いのはわかっていました。でも、足を下ろしているのが辛かったのです。友人は笑いながら「もちろん」と言ってくれました。食事の間中、向かいの椅子に足を乗せながら、「これはさすがに普通じゃないかもしれない」と思い始めていました。それから数日経っても、足のジンジンとした痛みは引きませんでした。歩くと痛む。階段を下りると痛む。床に足をつけるたびに、鈍い痛みが響く。翌週のことでした。ふと目の前に「整形外科」の看板が目に入りました。「そういえば、ちゃんと診てもらったことがなかったな」何となく、吸い込まれるように受付をしました。「発表会でトウシューズを長時間履いていて、足の指に激痛がありました」と先生に伝えると、「レントゲンを撮りましょう」と言われました。「レントゲン?なぜ?」と、そのときは不思議な気持ちでした。骨折しているとは、まったく思っていなかったのです。

レントゲンに映っていたもの

撮影を終えてしばらくすると、先生が画像を見せながら説明してくださいました。「小指の隣の指ね、ここ。線が入っているでしょ」画面を指差しながら、先生は穏やかにおっしゃいました。「これ、ひびの後ですよ。今は少しずつ治っているから、そのままで大丈夫。湿布を出しておくから、痛かったら貼ってね」あっけないほど、穏やかな説明でした。「ひびの後」——その言葉が、頭の中でゆっくりと意味を持ちはじめました。ひびが入っていた。あの脳を突き抜けるような激痛は、骨にひびが入っていたから。ロキソニンが効かなかったのも、当然だったのかもしれない。発表会の本番で、ひびが入ったままの足で踊り続けていたのです。先生の言葉は淡々としていましたが、私の中ではいろいろな感情が混ざり合っていました。驚き。安堵。そして、少しの後悔。

あの激痛はひびだったと知ったときの気持ち

「ひびだったのか」その言葉が頭に浮かんだとき、まず感じたのはほっとした気持ちでした。あの激痛は本物だった。気のせいでも、弱さでも、根性が足りないせいでもなかった。骨にひびが入っていたから痛かったのです。「あの痛みには、ちゃんと理由があった」——そのことに、なぜかほっとしました。友人との食事中、向かいの椅子に足を上げなければいられないほど痛かったのも、当然だったのです。あのお行儀の悪い姿も、状況を考えればやむを得なかった。そう思うと、少し笑えました。でも同時に、後悔もありました。もっと早く整形外科に行っていれば、診断が早かった。レッスン中に「これは普通の痛みじゃない」と気づいて誰かに相談していれば、もしかしたらもっと安全な方法で舞台に立てたかもしれない。夢を追いかけることに夢中になりすぎて、体が発しているサインを見逃していました。

骨折・ひびを経験して思うこと

まさかひびだなんて、思ってもいませんでした。「発表会でよく踊り過ぎた」「トウシューズで足を痛めた」程度にしか思っていなかった。でも現実は、骨に線が入るほどのダメージを足に与えながら踊り続けていたのです。この経験から、強く思うようになったことがあります。夢を追いかけることと、体をケアすることは、両立しなければいけない。どちらか一方を犠牲にしていては、長く踊り続けることができない。バレエは、ゆっくりと体を育てていく芸術です。一つの発表会のために体を壊してしまったら、次の発表会に向けて再び立ち上がることができなくなるかもしれない。疲れた体を労わること、痛みのサインに耳を傾けること、必要なときに専門家に診てもらうこと——それも、バレエを続けるための大切な技術だと気づきました。40代の体は、20代とは違います。回復に時間がかかる。無理をした分だけ、後から体にのしかかってくる。だからこそ、日頃からのケアと、体の声を聞く習慣が大切なのです。あの発表会から何年も経った今、私は現在バレエをお休みしています。けれど、あの舞台で感じた感動は、今も心の中に残っています。ひびという代償を払ってでも、あの舞台に立てたことは、後悔していません。ただ、もっと賢く体をケアしながら夢を追いかける方法があったはずだとも思っています。それが、この記事を書いた理由です。

まとめ|体の限界サインを見逃さないために

発表会の本番で、足の指にひびが入ったまま踊っていました。舞台の上では夢中で痛みを感じなかった。でも幕が下りた瞬間に涙が出そうなほどの痛みが戻ってきた。その痛みの正体を知ったのは、一週間後の整形外科でのことでした。体の限界サインを見逃さないために、お伝えしたいことがあります。「いつもと違う痛み」を感じたら、早めに専門家に相談してください。バレエの痛みはある程度当たり前、と思いがちです。でも筋肉痛と骨へのダメージは、別物です。以下のような痛みは、体が「これ以上は危険だ」と教えてくれているサインです。

  • 鈍くて深いところから来る痛み(筋肉痛とは明らかに違う感覚)
  • 時間が経っても引かない痛み(翌日・翌々日も続く場合は特に注意)
  • 特定の動作で鋭く走る痛み(体重をかけた瞬間や、踏み込んだときに激痛が走る)
  • 安静にしていても痛む(動かさなくてもズキズキする)

このような痛みが続くときは、「バレエだから仕方ない」と放置せず、整形外科を受診することを強くおすすめします。夢を追いかけることは大切です。舞台に立ちたい気持ちも、レッスンを休みたくない気持ちも、よくわかります。でも体を壊してしまったら、その先の夢を追いかけることができなくなります。

体のケアも、バレエの一部です。疲れた体を労わることも、長く踊り続けるための大切な練習なのだと、あの発表会の経験が教えてくれました。

最後に、一つお伝えしたいことがあります。

整形外科の先生があっけないほど穏やかに「ひびの後ですよ」とおっしゃったとき、「もっと大ごとにならなくてよかった」と思いました。完全骨折ではなく、しかもすでに治り始めていた。最悪の事態ではなかった。でも同時に、「なぜもっと早く来なかったのか」とも思いました。痛みがひどかった発表会のレッスン中に診てもらっていれば、「ひびが入り始めている可能性がある、無理をしないように」という判断ができたかもしれない。テーピングの仕方や踊り方を工夫できたかもしれない。「病院に行くほどではないかな」「バレエの痛みは我慢するものだから」——そういった思い込みが、受診を遅らせていました。

大人バレエを楽しんでいる皆さんに伝えたいのは、「おかしいな」と思ったら、早めに専門家に相談してほしいということです。整形外科の先生は、バレエの痛みにも親身になって対応してくれます。あなたの体を守れるのは、最終的にはあなた自身だけです。

この記事を書いた人

40歳でバレエを未経験からスタートし、15年間レッスンを続けてきた会社員。通算7回の発表会に出演し、トウシューズで舞台に立つという夢を叶えました。スポーツ整形外科への通院経験も踏まえながら、バレエを続ける中で感じた体の悩みや向き合い方を発信しています。飾らないリアルな体験を通して、これからバレエを始める方や、レッスンを続けている方へ役立つ情報をお届けしています。

参考情報

この記事はあくまでも個人の体験談に基づくものです。足の痛みや骨のけがについて、より詳しく知りたい方は以下の公的情報もあわせてご参照ください。

受診の目安や治療方針は個人の状態によって異なります。気になる症状がある場合は、必ず整形外科や専門医にご相談ください。

※この記事は、40歳からバレエを始めて15年間通い続けた筆者自身の体験をもとに書いています。足の痛みやけがに関する内容は個人の経験に基づくものであり、医療的なアドバイスを目的としたものではありません。痛みが続く場合や気になる症状がある場合は、必ず整形外科や専門医にご相談ください。

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